IP case studies判例研究

平成25年(行ケ)第10164号「PEARL\パール」事件

名称:「PEARL\パール」の取消審判に関する事件
知的財産高等裁判所第3部:平成 25 年(行ケ)第 10164 号
判決日:平成25年12月25日
判決:控訴棄却
商標法:50条
キーワード:不使用取消審判、商標の使用
[概要] [概要] [概要] [概要]
「パールフィルター」又は「PEARL FILTER」との商標の使用は,「パー
ル」と「PEARL」を2段にして成る登録商標の使用に当たらないとして,同登録商
標の使用に当たるとした審決を取り消した事例
[特許庁の判断(審決)] [特許庁の判断(審決)] [特許庁の判断(審決)] [特許庁の判断(審決)]
本件広告A及びBには,「キラキラきらめく」及び「パールフィルター」の文字が上下2段
に金色で比較的大きく表されており,その下には,「だから,手元・口元にも」及び「優しく,
キレイ。」の文字が上下2段に銀色で小さく表されている。
「だから,手元・口元にも」及び「優しく,キレイ。」の文字は,手元・口元が綺麗に見え
るといった程の商品「たばこ」の特徴を表示するものと理解されるものであり,自他商品識
別機能を果たさない部分である。
「キラキラきらめく」及び「パールフィルター」の文字は,上下2段に記載されているこ
とから視覚上分離して看取され得るものであり,「パールフィルター」の文字は,独立して看
取,把握されるものであって,自他商品識別機能を有している部分ということができる。
また,「パールフィルター」の文字中,「フィルター」の文字は,指定商品「たばこ」との
関係において,該たばこがフィルター付きの商品であること等を表し,自他商品識別機能を
果たさない部分であるから,「パール」の文字が自他商品識別機能を有している部分というこ
とができる。
「パールフィルター」の文字中の「パール」の文字は,本件商標と同一の「パール」の称
呼及び「真珠」の観念を生ずる商標であるから,「パールフィルター」は,本件商標と社会通
念上同一の商標といえる。
以上によれば,本件商標の通常使用権者であるD社は,本件審判の請求の登録前3年以内
に日本国内において,指定商品「たばこ」に関する広告に本件商標と社会通念上同一の商標
である「パールフィルター」を付して展示又は頒布していたものであるから,商標法2条3
項8号の広告に登録商標を付して展示又は頒布したものと認められる。
よって,本件商標の登録は,商標法50条1項の規定により取り消すことはできない。
[裁判所の判断(本判決)]
1、本件各広告において「パール」又は「PEARL」の標章が商標として使用されている
か否かについて
たばこ業界においては,フィルター付きたばこのブランドとして「○○フィルター」と称
する例が存在し,世界的に販売数量の多いたばこブランドである「ウィンストン・フィルタ
ー」や「キャメル・フィルター」などの例が存在すること(乙2,3),及び本件各広告にお
ける「パールフィルター」や「PEARL FILTER」の表示は,本件商品のメインブラ
ンドである「ピアニッシモ スーパースリム」ないし「PIANISSIMO」程ではないに
せよ,本件各広告中において前記認定のとおり中程度に目立つ態様で表示されており,同程
度に表示されている「キュッと詰まったメンソール」「20本入りなのにコンパクト」「にお
い・煙り少ない」(本件広告A,B,D)及び「この細さでこの刺激。直径5㎜のセンセーシ
ョン。」(本件広告C2)等に比べると,単なる商品の内容や形状を説明しただけのものでは
なく,そのフィルターにパール状の光
沢や色つやがあるとの特徴があるフィルター付きたばこである本件商品を,「パールフィルタ
ー」や「PEARL FILTER」と称してその宣伝広告活動しているものと認めることは
可能である(「キラキラきらめく」は「パールフィルター」を修飾する形容詞として表示され
ているものと解される。)。
これらの事実からすると,被告は,そのブランド戦略からして,本件商品に「ピアニッシ
モ・スーパースリム・メンソール・ワン」との商品名を付し,「ピアニッシモ・ファミリー」
と称される商品群に属する一銘柄として,「PIANISSIMO」の商標を強調するなどし
た上で,フィルターにパールのような光沢とつやのあるたばこである本件商品の特徴に由来
する「パールフィルター」や「PEARL FILTER」という二次的なブランドも採用し
たものと認めるのが相当である。
以上によれば,被告は,本件各広告において,「ピアニッシモ スーパースリム」「PIAN
ISSIMO SUPER SLIM」ないし「PIANISSIMO」等を本件商品のメイ
ンブランドとして広告宣伝し,取引者及び需要者は,これらの商標によって,本件商品を他
の商品から識
別するものであるけれども,同時に,「パールフィルター」や「PEARL FILTER」
との標章も,本件商品の特徴を表す二次的ブランドとして,本件各広告に使用されたものと
認められる。
2、本件各広告における「パールフィルター」や「PEARL FILTER」との商標が,
本件商標と社会通念上同一の商標といえるか否か
本件広告A,B,C2及びD中の「パールフィルター」や本件広告C1中の「PEARL F
ILTER」のうち,「フィルター」ないし「FILETER」は,本件商標の指定商品であ
るたばこのフィルターを指す語であって,これをフィルター付きたばこに使用した場合,そ
れ自体識別力を有しない語である。
これに対し,「PEARL」の文字は,真珠という意味の英語であり,そのカタカナ表記で
ある「パール」を含め,日本人によく知られている言葉であるから,これをたばこという商
品に使用した場合に,自他識別機能を有する商標となり得るものである。
しかし,前記イ認定のとおり,本件各広告においては,「パール」や「PEARL」は,本
件商品の二次的ブランドである「パールフィルター」や「PEARL FILTER」との商
標の一部として使用されているにとどまるものである。「パールフィルター」や「PEARL
FIL
TER」との商標は,本件商品の二次的ブランドとして使用されているものである以上,取
引者及び需要者はこれを一連一体のものとして認識し,把握するものであって,「パール」や
「PEARL」のみを分離して認識し,把握するものではない。
したがって,本件各広告において使用されている「パールフィルター」ないし「PEAR
L FILTER」との商標は,本件商標と社会通念上同一の商標であるということはできな
い。
以上によれば,本件各広告において,本件商標が使用されているとは認められない。

平成25年(行ケ)第10164号「PEARL\パール」事件

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