IP case studies判例研究
審決取消訴訟等
平成24年(行ケ)10290号「モンシュシュ」事件
名称:「モンシュシュ」事件
審決取消請求事件
知的財産高等裁判所:平成 24 年(行ケ)10290 号 判決日:平成 25 年 1 月 22 日
判決:請求棄却
商標法 4 条 1 項 11 号
キーワード:類否、一体性、周知性
全文:http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130326102907.pdf
[概要]
原告(モンシュシュ、現モンシェール)の本件商標に対して、被告(ゴンチャロフ)が無
効審判を請求し、無効審決がなされたため、無効審決の取消を求める訴訟を提起したのが、
本件事案である。
[本件商標]
第30類、指定商品:「菓子及びパン、氷菓子、ゼリー菓子など」、商標権者:原告
[引用商標]
第30類、指定商品:「菓子、パン」、商標権者:被告
[審決の理由]
本件商標は,その指定商品中の第30類「菓子及びパン,氷菓子,ゼリー菓子」について,
引用商標と相紛れるおそれのある類似の商標であり,かつ,その指定商品も抵触関係にある
ものであるから,商標法4条1項11号に該当するというものである。
[裁判所の判断](判決文の一部抜粋)
1.取消事由1(「本件商標の一体性」の判断の誤り)
(1)本件商標
本件商標は,飾り文字で表してなる「Baby」,「Mon」及び,これらよりわずかに小
さく表される「chouchou」の各欧文字を3段に配したものの左側にバラのつぼみの
図形を配し,「Baby」の欧文字の左斜め上側に羽根のような図形及び交差部を太く表して
なる十字図形を配してなるものである。この構成態様に照らせば,本件商標は,各欧文字と
各図形とを組み合わせてなる結合商標であり,各図形部分は,いずれも飾りとして認識され,
出所識別標識としての称呼,観念を生じることはないとみるのが相当である。そうすると,
本件商標の構成中の「Baby」,「Mon」及び「chouchou」の欧文字部分は,こ
れに接する者をして,その構成中の各図形部分から分離して看取,把握され得るものと認め
るべきである。ところで,「baby」の文字は,「ベビー」と発音されるものであって,「赤
ん坊,赤ちゃん」等の意味を有するほか,他の語と結合して「小さい,小型の,子供用の」
等の意味をもって複合語を形成するものとしても一般に広く慣れ親しまれた英単語であると
ころ(乙22~24),「ベビー」の片仮名は,菓子やパンを含む様々な商品分野において,
商品が通常の大きさよりも小さなものであることを表すものとして,日常的に使用されてい
るものである・・・・したがって,本件商標の構成中の「Baby」の欧文字からは,出所
識別標識としての称呼,観念を生じることはないとみるのが相当である。・・・・そして・・・・
「Mon」はフランス語で「私の」を意味し,「chouchou」は「お気に入り」を意味
するところ,これらの単語はフランス語以外では意味をなさないことからすると,「Mon c
houchou」からは「私のお気に入り」の意味合いを想起する以外の観念は生じない。
したがって,本件商標は,その構成中の「Mon」及び「chouchou」の欧文字部
分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものというべきであり,「Mon」及び「c
houchou」の欧文字部分が本件商標の要部であり,その構成文字に相応して,「モンシ
ュシュ」の称呼を生じ,「私のお気に入り」ほどの意味合いを想起させるものといえる。
(2)引用商標
引用商標は,「MONCHOUCHOU」の欧文字と「モンシュシュ」の片仮名とを上下2
段に書してなり,その構成態様に照らせば,下段の片仮名は,上段の欧文字の読みを特定す
るものとして理解され,上段の欧文字は,本件商標の構成中の「Mon」及び「chouc
hou」の2つのフランス語の単語を大文字にて書体を同じくし一連にしてなるものである
から,その構成文字に相応して,「モンシュシュ」の称呼を生じ,「私のお気に入り」ほどの
意味合いを想起させるものといえる。
(3)本件商標と引用商標との類否についての検討
・・・・本件商標と引用商標とは,外観においては相違するものの,「モンシュシュ」の称
呼を同じくし,かつ,「私のお気に入り」ほどの意味合いを想起させる点を共通にするもので
あるから,これらを総合勘案すれば,両商標は,類似の商標というべきである。原告が主張
する別件登録商標に関する別件審決は,事案を異にし、上記判断を左右するものではない。
したがって,原告の主張する取消事由1には理由がない。
2.取消事由2(本件商標の周知性の認定の誤り)
原告は,「モンシュシュ」が「堂島ロール」を始めとしたロールケーキや洋菓子で大人気の
原告の店舗名として著名となった後,その姉妹店として,洋菓子店舗「Baby Mon c
houchou(ベビーモンシュシュ)」が開業された取引実情を踏まえ,本件商標に接した
取引者・需要者は,原告の著名なロールケーキ「堂島ロール」を販売する原告の洋菓子店「パ
ティシエリーモンシュシュ」の姉妹店であると想起すると主張する。しかし,本件商標と同
一の構成からなる標章が商品に使用された事実を認める証拠はない。・・・・その他,取引の
実情に照らしても,上記1でした類否判断を左右すべき事実関係は認められない。
したがって,原告の主張する取消事由2も理由がない。
3.結論
原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
[コメント]
被告が、原告に対して、別途請求した商標権侵害訴訟においても、本審決取消訴訟と同様
に、原告の登録商標である結合商標の構成部分の内、「Mon」及び「chouchou」
部分を要部と認定し、それ以外の部分については、出所識別標識としての称呼,観念を生じ
ることはないと判断した。その結果、原告の登録商標の使用が、被告の商標権を侵害すると
して、5000万円を超える損害賠償を命じる判決を行っている。このような判断は、最高
裁平成20年9月8日判決(つつみのおひなっこや事件)に基づくものであり、妥当と考え
る。
平成24年(行ケ)10290号「モンシュシュ」事件
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