IP case studies判例研究
審決取消訴訟等
平成26年(行ケ)10095号「果菜自動選別装置」事件
名称:「果菜自動選別装置」事件
審決取消請求事件
知的財産高等裁判所:平成 26 年(行ケ)10095 号 判決日:平成 26 年 12 月 24 日
判決:請求認容(審決取消)
特許法第29条第2項
キーワード:進歩性、動機付け、阻害要因
[概要]
原告は、発明の名称を「果菜自動選別装置」とする被告の特許について無効審判を請求し
たところ、特許庁が請求不成立の審決をしたことから、その取消しを求めた。
[審決の判断]
技術分野、搬送対象及び解決すべき課題を異にし、かつ、計測部を備えた甲1発明1にお
いて、甲2発明1を組み合わせる動機付けはない。両者を組み合わせることができたとして
も、「物品載置部」を計測部との関係において復回転(戻り回転)方向に移動させる理由がな
い点で、相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項である構成を導き出すことはできな
い。
[裁判所の判断]
本件発明1及び3の相違点に係る構成は、搬送ベルトの回転動作は「往復回転可能」であ
り、計測部との位置関係を特に限定していないことからすれば、甲1発明において、甲2発
明の搬送ユニットを適用したものは、往復回転可能な搬送ベルトを備え、「果菜載置部」が、
往回転及び復回転(戻り回転)方向に移動するものとなり、結局、相違点1-2及び2-2
に係る構成を備えるものと認められる。
甲1発明と甲2発明とは、物品を選別・搬送する方法及び装置に関する技術として共通し
ているといえる。また、両者が搬送する物品は、甲1発明では、キューイ等の果菜であるの
に対して、甲2発明では、薄物や不定形品などの小物類であるから、物品の大きさや性状に
大きな相違はない。
甲1発明の振分けコンベアの搬送方向側方に向けて傾動可能な構成において生じる搬送品
の損傷、破損という技術課題を解決するために、甲1発明に甲2発明を適用して、上記相違
点1-2及び2-2の構成に至る動機付けが存在するといえる。
甲2は、ターンテーブル方式による従来例について、水平面であることに、円筒物が転動
して落下するという問題を指摘しており、搬送物によっては、転がりやすいものもその射程
に置いているものである。また、果菜を転がらないように果菜載置部(物品載置部)の構造
を工夫することは、本件特許の出願前から周知であり(甲1、2、5)、適宜、物品載置部の
構造について損傷の生じないように工夫するものである。そうすると、移送シート49がわ
ずかに上下動することが阻害要因になるということはできない。
[コメント]
技術分野や課題の共通性に関して、上位概念では共通または類似するものの、下位概念で
は具体的な性状が異なるとして、その判断に迷う場面は多いと思われる。本判決では、甲1
発明におけるキューイ等の果菜と、甲2発明における薄物等の小物類に対し、それら物品の
大きさや性状に大きな相違がないことや、他の文献(甲5)に記載の従来技術が小荷物と果
菜を区別していないことを踏まえて、それらの技術分野が異なるというほどには相違してい
ない、と判断されている。共通性を肯定する立場にとって参考になろう。
平成26年(行ケ)10095号「果菜自動選別装置」事件
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