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令和2年(ワ)第13626号「ガススクラバー流体のための浄化設備」事件

名称:「ガススクラバー流体のための浄化設備」事件
特許権侵害差止請求事件
東京地方裁判所:令和2年(ワ)第13626号 判決日:令和5年2月17日
判決:請求棄却
特許法70条
キーワード:文言侵害、包袋禁反言
判決文:https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/807/091807_hanrei.pdf

[概要]
本件明細書の記載や異議申立事件における主張に基づいて構成要件を解釈した結果、被告各製品はいずれも本件発明の技術的範囲に属しないものであるとして侵害が否定された事例。

[本件発明1]
A :排出ガススクラバー流体ループ(9)からの汚染されたスクラバー流体のための浄化設備であり、
B :前記スクラバー流体ループ(9)から汚染されたスクラバー流体の一部を抜き取り、それにより、汚染されたスクラバー流体の前記一部を処分のためにスクラバー流体ループから取り除くための手段と、
C :前記汚染されたスクラバー流体の前記一部から少なくとも汚染物質相と浄化されたスクラバー流体を分離するためのディスクスタック遠心分離機(12,12’)を備えており、
D1:その分離機は、分離ディスク(15,15’)のスタックを備えた分離空間(14,14’)を取り囲んでいるローター(13,13’)と、
D2:前記分離空間の中へ延びている前記汚染されたスクラバー流体の前記一部のための分離機入口(11,11’)と、
D3:前記分離空間から延びている浄化されたスクラバー流体のための第一の分離機出口(16,16’)と、
D4:前記分離空間から延びている前記汚染物質相のための第二の分離機出口(17,17’)を備えており、
E :さらに、前記汚染されたスクラバー流体の前記一部を前記分離機入口に案内するための手段と、
F :前記浄化されたスクラバー流体を前記第一の分離機出口から環境に放出するための手段と、
G :前記汚染物質相を前記第二の分離機出口から回収するための手段を備えている
H :浄化設備。

[被告製品1(主位的主張)および被告製品2]
1a:排ガス再循環ユニットに噴霧される噴霧水の循環からの、汚染された噴霧水のための浄化設備であり、
1b:前記噴霧水の循環から汚染された噴霧水の一部を処分のために噴霧水の循環から取り除くための手段と、
1c:前記汚染された噴霧水の前記一部から少なくとも汚水と浄化された噴霧水を分離するためのディスク型遠心分離機を備えており、
1d1:その分離機は、積み重ねた分離板を備えた空間を取り囲んでいるローターと、
1d2:前記空間の中へ延びている前記汚染された噴霧水の前記一部のための分離機入口と、
1d3:前記空間から延びている浄化された噴霧水のための第一の分離機出口と、
1d4:前記空間から延びている汚水のための第二の分離機出口を備えており、
1e:さらに、前記汚染された噴霧水の前記一部を前記分離機入口に案内するための手段と、
1f:前記浄化された噴霧水を前記第一の分離機出口から環境に放出するための手段と、
1g:前記汚水を前記第二の分離機出口から回収するための手段を備えている、
1h:浄化設備。

[被告製品1(予備的主張)および被告製品3]
2a:排ガス再循環ユニットに噴霧される噴霧水の循環からの、汚染された噴霧水のための浄化設備であり、
2b:前記噴霧水の循環から汚染された噴霧水の一部をWTSポンプに流出させ、それにより、汚染された噴霧水の前記一部を処分のために噴霧水の循環から取り除くためのWTSポンプ及び配管と、
2c:前記汚染された噴霧水の前記一部から少なくとも汚水と浄化された噴霧水を分離するためのディスク型遠心分離機を備えており、
2d1:その分離機は、積み重ねた分離板を備えた空間を取り囲んでいるローターと、
2d2:前記空間の中へ延びている前記汚染された噴霧水の前記一部のための分離機入口と、
2d3:前記空間から延びている浄化された噴霧水のための第1の分離機出口と、
2d4:前記空間から延びている汚水のための第1の分離機出口を備えており、
2e:さらに、前記汚染された噴霧水の前記一部を前記分離機入口に案内するための配管と、
2f:前記浄化された噴霧水の循環を前記第一の分離機出口から環境に放出するための配管及び三方弁と、
2g:前記汚水を前記第二の分離機出口から回収するための配管を備えている、
2h:浄化設備。

[主な争点]
被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)

[裁判所の判断]
『2 争点1(被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について
(1) 被告製品1(主位的主張)及び被告製品2について
ア 構成要件Fの充足性
a 本件発明の特許請求の範囲には・・・(略)・・・本件発明に係る「浄化設備」は、「スクラバー流体ループ」から「汚染されたスクラバー流体の一部」を抜き取り、これを「ディスクスタック遠心分離機」で「汚染物質相」と「浄化されたスクラバー流体」に分離し、この「浄化されたスクラバー流体」を「第一の分離機出口から環境に放出する」というものであり、「ディスクスタック遠心分離機」により「浄化されたスクラバー流体」は、そのまま「環境に放出する」ことになると理解することができる。
b また、本件明細書には・・・(略)・・・浄化設備は、「スクラバー流体」の浄化能力を向上させ、また、点検修理の必要性を最小とするために、「ディスクスタック遠心分離機」を使用し、この「分離機」の動作により、「浄化されたスクラバー流体」が規制を満たすことになり、環境への影響を最小にして環境に解放することができ、他の処理をするための設備を設ける必要がなく、機器の点検修理や交換の必要性を最小にすることができるものであると理解することができる。
c さらに、証拠(甲3、乙47ないし49)によれば、本件異議申立事件において・・・(略)・・・③原告は、特許庁に対し、平成28年9月8日付けの意見書により、前記①の取消しの理由に関して、本件訂正後の発明である本件発明は、スクラバー流体ループ(9)から汚染されたスクラバー流体の一部を除去するものであり、除去後の流体をループに戻すものではなく、浄化されたスクラバー流体は環境に放出されるものであり、船の外側又は一時的貯蔵のためのタンクに放出される旨、及び、本件発明は、抜き取られた汚染されたスクラバー流体の一部を清浄化し、清浄化されたスクラバー流体が、環境に放出し得る基準を満たすようにするものである旨を主張したことが認められる。上記認定事実によれば、本件発明は、「ディスクスタック遠心分離機」により「浄化されたスクラバー流体」が直ちに環境に放出し得るものであることを前提としたものであるということができる。
d 以上の本件発明の特許請求の範囲及び本件明細書の各記載並びに原告の本件異議申立事件における主張に加え、本件明細書において、「ディスクスタック遠心分離機」により「浄化されたスクラバー流体」を更に浄化するための装置を設けることを示唆する記載は見当たらないことからすると、「浄化されたスクラバー流体を前記第一の分離機出口から環境に放出するための手段」(構成要件F)とは、「分離機」により「浄化されたスクラバー流体」が、その後、「分離機」とは別に設けられた浄化設備により浄化処理されることなく船の外側に放出され又は船の外側に放出するための一時貯蔵タンクに放出されるものをいうと解するのが相当である。
(イ) 被告製品1(主位的主張)及び被告製品2への当てはめ
・・・(略)・・・② 被告製品2を含む配水・水処理システムは、別紙製品目録記載2の図のとおりの構成を有し、船舶のエンジンの排ガスを洗浄するための噴霧水を循環させたり、処理したりするものであること、③ 上記システム内において、噴霧水は、バッファタンクから処理水供給ポンプによって排ガス再循環ユニットに供給され、その後、受容タンクユニットを通り、再びバッファタンクに流し込まれることにより、循環(ループ)していること、④ バッファタンクにある噴霧水の一部は、上記③のとおりに循環せず、バッファタンクからEGR排水タンクに貯留された後、水処理システムポンプによって分離機に供給され、分離機によって分離された汚染物質相はEGR汚水タンクに貯留されて陸地に搬出されることとなり、分離機によって汚染物質相を取り除かれた噴霧水は、フィルタを経て、三方弁に到達し、弁の向きによって、船外に排出される(ブリードオフ)か、再びEGR排水タンクに貯留されることになること、⑤ 被告製品2は、同目録記載2の図の赤枠で囲まれた部分であることが認められる。
そうすると、被告製品2は、バッファタンクからEGR排水タンクに貯留された噴霧水が分離機によって汚染物質相を取り除かれ、フィルタによって更に浄化された後に、船外に排出されるか又は再びEGR排水タンクに戻されるという構成を備えるものであり、「分離機」により「浄化されたスクラバー流体」が、その後、「分離機」とは別に設けられた浄化設備により浄化処理されることなく船の外側に放出され又は船の外側に放出するための一時貯蔵タンクに放出されるものではない。したがって、被告製品2は、「浄化されたスクラバー流体を前記第一の分離機出口から環境に放出するための手段」を備えず、構成要件Fを充足しないというべきである。
(ウ) 原告の主張の検討
原告は、① 本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書には、浄化されたスクラバー流体を更に処理することなく、海に放出することを要するとの記載はない、② 本件訂正により、本件特許の【請求項1】の従属項である【請求項10】を訂正するに当たり、浄化されたスクラバー流体の品質が所定レベルより低い場合、浄化されたスクラバー流体を分離機入口に戻す構成を維持しているから、本件発明は、分離機での浄化処理後、環境への放出前に、更に浄化処理を行う態様を予定している、③ 本件明細書の「ディスクスタック遠心分離機をスクラバー流体に適用することによって、汚染物質相の大部分が濃縮形態で取り除かれ得る」(【0014】)との記載によれば、ディスクスタック遠心分離機によっても分離し得ない汚染物質相が残存し得る以上、補助的にフィルタ等による分離を行うことは排除されないと主張する。
しかし、上記①については、本件特許の特許請求の範囲及び本件明細書において、浄化されたスクラバー流体を更に処理することなく、海に放出することを要することを明示した記載は見当たらないものの、前記(ア)のとおり、本件発明の特許請求の範囲及び本件明細書の各記載並びに原告の本件異議申立事件における主張、さらには、本件明細書には、「ディスクスタック遠心分離機」により「浄化されたスクラバー流体」を更に浄化するための装置を設けることを示唆する記載が見当たらないことは、いずれも、「浄化されたスクラバー流体を前記第一の分離機出口から環境に放出するための手段」(構成要件F)とは、「分離機」により「浄化されたスクラバー流体」が、「分離機」とは別に設けられた浄化設備により浄化処理されることなく、船の外側に放出されるなどするものをいうとの理解をもたらすものであるから、その点を明示する記載が存在しないからといって、前記(ア)の解釈が左右されるものではない。
上記②については、前記(ア)bのとおり、本件明細書の記載(【0008】、【0009】及び【0014】)によれば、本件発明に係る浄化設備について、「スクラバー流体」の浄化能力を向上させ、また、点検修理の必要性を最小とするために、「ディスクスタック遠心分離機」を使用し、この「分離機」の動作により、「浄化されたスクラバー流体」が規制を満たすことになり、環境への影響を最小にして環境に解放することができ、他の処理をするための設備を設ける必要がなく、機器の点検修理や交換の必要性を最小にすることができるものであると理解することができる。そうすると、本件発明は、「分離機」の動作によって上記の作用効果を実現するものであるから、「浄化されたスクラバー流体」を再び「分離機」入口に戻すことを排除するものではないが、「分離機」により「浄化されたスクラバー流体」が、「分離機」とは別に設けられた浄化設備により浄化処理されて、船の外側に放出されるなどすることを予定したものではないというべきである。したがって、本件訂正後の【請求項10】の記載をもって、本件発明が、「分離機」での浄化処理後、環境への放出前に、別に設けられた浄化設備により更に浄化処理を行う態様を予定しているということはできない。
上記③については、本件明細書の記載からは、「ディスクスタック遠心分離機をスクラバー流体に適用することによって、汚染物質相の大部分が濃縮形態で取り除かれ」(【0014】)た「浄化されたスクラバー流体」について、「汚染物質相」が残存するため規制を満たさず、環境に放出することができないとは直ちには読み取れない。そうすると、本件明細書の【0014】の記載をもって、「分離機」により「浄化されたスクラバー流体」を補助的にフィルタ等により浄化処理することが示唆されているということはできない。
・・・(略)・・・。
(2) 被告製品1(予備的主張)及び被告製品3について
ア 構成要件Bの充足性
(ア) 構成要件Bの解釈
a 本件発明の特許請求の範囲には、・・・(略)・・・「浄化設備」は、「スクラバー流体ループ」から「汚染されたスクラバー流体の一部」を抜き取り、これを「ディスクスタック遠心分離機」で「汚染物質相」と「浄化されたスクラバー流体」に分離し、この「浄化されたスクラバー流体」を「第一の分離機出口から環境に放出する」というものであり、「ディスクスタック遠心分離機」により「浄化されたスクラバー流体」は「環境に放出」され、「スクラバー流体ループ」に戻されることはないと理解することができる。
b また、本件明細書には、・・・(略)・・・浄化設備は、「汚染されたスクラバー流体中の汚染物質相の量」を効率的に「汚染物質相」を分離することができる程度にするために、「スクラバー流体ループ」から「汚染されたスクラバー流体の一部」を抜き取り、抜き取った「汚染されたスクラバー流体の一部」を「ディスクスタック遠心分離機」により少なくとも「汚染物質相」と「浄化されたスクラバー流体」に分離するというものであり、「浄化されたスクラバー流体」は「分離機出口」を出て、環境中に放出されることを読み取ることができ、「浄化されたスクラバー流体」が再び「スクラバー流体ループ」に戻されることは予定されていないと理解することができる。
c さらに、前記(1)ア(ア)cのとおりの原告の本件異議申立事件における主張によれば、本件発明において、「ディスクスタック遠心分離機」により「浄化されたスクラバー流体」は、「スクラバー流体ループ」に戻されるものではなく、環境に放出されるものであることが前提とされているということができる。
d 以上の本件発明の特許請求の範囲及び本件明細書の各記載並びに原告の本件異議申立事件における主張に加え、本件明細書には、「ディスクスタック遠心分離機」により「浄化されたスクラバー流体」を再び「スクラバー流体ループ」に戻すことを示唆する記載は見当たらないことからすると、「スクラバー流体ループ(9)から汚染されたスクラバー流体の一部を抜き取り、それにより、汚染されたスクラバー流体の前記一部を処分のためにスクラバー流体ループから取り除くための手段」(構成要件B)とは、「分離機」により「浄化されたスクラバー流体」を全て環境に放出し、再び「スクラバー流体ループ」に戻すことはないものをいうと解するのが相当である。
(イ) 被告製品1(予備的主張)及び被告製品3への当てはめ
・・・(略)・・・② 被告製品3を含む配水・水処理システムは、別紙製品目録記載3の図のとおりの構成を有し、船舶のエンジンの排ガスを洗浄するための噴霧水を循環させたり、処理したりするものであること、③ 上記システム内において、噴霧水は、バッファタンク(Buffer tank)からClean Water Supply pumpによってEGRユニットに供給され、その後、RTUを通り、Circulationpumpによって再びバッファタンクに流し込まれることにより、循環(ループ)していること、④ バッファタンクにある噴霧水の一部は、上記③のとおりに循環せず、バッファタンクからポンプ(WTS pump)によって分離機(Separator)に供給されること、⑤ 分離機によって分離された汚染物質相は、EGR汚水タンクに貯留されて陸地に搬出されること、⑥ 分離機によって汚染物質相を取り除かれた噴霧水は、QC monitorを経て、一つ目の三方弁に到達すること、⑦ 一つ目の三方弁に到達した噴霧水は、弁の向きによって、再びバッファタンクに送り込まれるか、二つ目の三方弁に向かうこと、⑧ 二つ目の三方弁に到達した噴霧水は、弁の向きによって、船外に排出される(ブリードオフ)か、分離機によって分離された上記汚染物質相とともにEGR汚水タンクに貯留されること、⑨ 被告製品3は、同目録記載3の図の「WTS」として点線で囲まれた部分であることが認められる。
そうすると、被告製品3は、バッファタンクから供給された噴霧水が分離機によって汚染物質相を取り除かれて浄化された後、被告製品2とは異なり、一つ目の三方弁における弁の向きによっては、本件発明の「スクラバー流体ループ」に相当する噴霧水の循環経路の一部をなすバッファタンクに再び送り込まれるという構成であり、「分離機」により「浄化されたスクラバー流体」を全て環境に放出するものではなく、その一部を再び「スクラバー流体ループ」に戻すものである。したがって、被告製品3は、「スクラバー流体ループ(9)から汚染されたスクラバー流体の一部を抜き取り、それにより、汚染されたスクラバー流体の前記一部を処分のためにスクラバー流体ループから取り除くための手段」を備えず、構成要件Bを充足しないというべきである。
・・・(略)・・・。
(ウ) 原告の主張の検討
原告は、被告製品1(予備的主張)及び被告製品3について、別紙製品目録記載3の図のとおり、WTS中のバッファタンクへ還流する経路とブリードオフ(船外環境への排出)の経路との分岐点に、一方の孔から入ってきた流体を二方向のいずれか一方に排出することができる三方弁が存在し、この三方弁がブリードオフの経路に向けて設定されていれば、処理後の噴霧水をスクラバー流体ループを形成するバッファタンクに還流させることはないと主張する。
しかし、被告製品1(予備的主張)及び被告製品3における三方弁(前記(イ))について、弁の向きを切り替えることは一切なく、汚染物質相を取り除かれた噴霧水が常に船外に排出される向きにされていることを認めるに足りる証拠はないから、上記三方弁は、必要に応じて、噴霧水が船外に排出される向きにされたり、バッファタンクに戻る向きにされたりするものと認めるのが相当である。そして、前記(ア)のとおり、「スクラバー流体ループ(9)から汚染されたスクラバー流体の一部を抜き取り、それにより、汚染されたスクラバー流体の前記一部を処分のためにスクラバー流体ループから取り除くための手段」(構成要件B)とは、「分離機」により「浄化されたスクラバー流体」を全て環境に放出し、再び「スクラバー流体ループ」に戻すことはないものをいうと解されるところ、被告製品1(予備的主張)及び被告製品3は、三方弁における弁の向きを必要に応じて変えることにより、分離機によって汚染物質相を取り除かれた噴霧水を船外に排出したり、本件発明の「スクラバー流体ループ」に相当する噴霧水の循環経路の一部をなすバッファタンクに再び送り込まれるものであるから、上記「手段」を備えないといわざるを得ない。』

[コメント]
本件特許の請求項1は特許権異議申立事件において訂正されており、原告はその訂正時の意見書で『一部を取り出して浄化したスクラバー流体をスクラバー流体ループに戻さず、すべてを環境に放出する』旨の主張をしており、さらに明細書の内容を総合的に勘案したうえで、裁判所は構成要件B、Fを認定し、各被告製品が技術的範囲に属さないと判断した。この判断は妥当なものであると考える。一方、原告の上記主張がないと仮定したとき、分離機以外の他の装置の存在の示唆が明細書にない場合に、原告に優位に働く状況もありうるのではないかと考える。また、三方弁により、浄化したスクラバー流体をバッファタンクへ戻す構成と、海水へブリードオフする構成を切替できることは明確であり、通常運転ではブリードオフをし、流体の状態に応じてバッファタンクへ送るようにコントロールされることも想定され、そのような運転であれば、運転の大部分において海水へのブリードオフを行っていると認定される可能性もあるものと考える。
以上
(担当弁理士:丹野 寿典)

令和2年(ワ)第13626号「ガススクラバー流体のための浄化設備」事件

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