IP case studies判例研究
侵害訴訟等
令和6年(ワ)第70223号「ゲームシステム及びゲームプログラム」事件
名称:「ゲームシステム及びゲームプログラム」事件
損害賠償請求事件
東京地方裁判所:令和6年(ワ)第70223号 判決日:令和7年9月11日
判決:請求棄却
特許法70条
キーワード:構成要件の用語の解釈
判決文:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-94988.pdf
[概要]
被告ゲームシステムは、購入ルビー(無料ルビー)及びゲーム実行ルビーの総量の和を、無料ルビーとしてユーザーに表示するにとどまり、「第2の仮想アイテム」であるゲーム実行ルビーの総量を記憶しているものとは認められないため、構成要件の「第2の仮想アイテムの数量」を「記憶」するものではなく、本件発明の構成要件を充足しない、と判断された事例。
[本件発明1-1]
【1A】 購入手続きを行なうことでユーザーに付与される第1の仮想アイテム、および、ゲームの実行によりユーザーに付与される第2の仮想アイテムを区別なく利用可能なゲームを実行するゲームシステムであって、
【1B】 前記ユーザーに対応付けて、前記第1の仮想アイテムの数量と、前記第2の仮想アイテムの数量とをそれぞれ記憶する手段と、
【1C】 前記ユーザーが前記第1の仮想アイテムおよび前記第2の仮想アイテムの両方を保有している場合、第2の仮想アイテムに優先して第1の仮想アイテムを消費させる手段と、
【1D】 を備えたことを特徴とするゲームシステム。
[主な争点]
1 被告ゲームシステムは「第2の仮想アイテムの数量とを…記憶する手段」(構成要件1B)を有するか(争点1-2)
2 被告ゲームシステムは「第1の仮想アイテムおよび前記第2の仮想アイテムの両方を保有している場合、第2の仮想アイテムに優先して第1の仮想アイテムを消費させる手段」(構成要件1C)を有するか(争点1-3)
[裁判所の判断](筆者にて適宜抜粋。挿入図は判決文からの引用である。)
『2 本件発明1に係る構成要件充足性(争点1-2及び争点1-3)
(1) 争点1-2(被告ゲームシステムは「第2の仮想アイテムの数量とを…記憶する手段」(構成要件1B)を有するか)
被告ゲームシステムにおいては、次のとおり、ゲーム実行ルビーが「第2の仮想アイテム」に該当するところ、ゲーム実行ルビーと購入ルビー(無料ルビー)の「総量」を記憶するにとどまる場合であっても、ゲーム実行ルビーの「数量」を記憶するといえるかどうかが問題となる。
ア 「第2の仮想アイテムの数量」の意義
特許請求の範囲の記載によれば、構成要件1Bの「第1の仮想アイテム」とは、構成要件1Aにおいて「購入手続きを行なうことでユーザーに付与される」ものであると規定され、構成要件1Bの「第2の仮想アイテム」とは、構成要件1Aにおいて「ゲームの実行によりユーザーに付与される」ものであると規定されている。その上で、構成要件1Cは、ユーザーが「第1の仮想アイテム」と「第2の仮想アイテム」の両方を保有している場合、「第2の仮想アイテムに優先して第1の仮想アイテムを消費させる」と規定している。
そして、本件明細書1には、「預け入れている無料メダルMfを引き出した遊技者は、当該メダルを使って遊技することができる」(段落【0035】)、「ゲームシステムにおいて、ゲーム中の遊技者が課金メダルMcと無料メダルMfの両方を保有しながら遊技している場合には、課金メダルMcの方を優先的に消費(利用)させる」ことによって、「直接的な収益に繋がる課金メダルMcを先に消費してもらうことで収益向上を図りやすい」(段落【0036】)という記載があることが認められる。
上記構成要件の文言及び本件明細書1の記載によれば、課金メダルMcが「第1の仮想アイテム」に、無料メダルMfが「第2の仮想アイテム」に、それぞれ該当するものであり、「第1の仮想アイテム」(課金メダルMc)を優先的に消費させるには、「第1の仮想アイテム」(課金メダルMc)と「第2の仮想アイテム」(無料メダルMf)をそれぞれ区別してその総量を記憶しておく必要があることからすると、構成要件1Bにいう「第2の仮想アイテムの数量」は、「第2の仮想アイテムの総量」を意味するものと解するのが相当である。
イ 被告ゲームシステムの充足性
(ア) 被告ゲームシステムの構成(弁論の全趣旨)
a 被告ゲームシステムには、有料ルビーと無料ルビーが存在する。
b ユーザーがルビーを購入すると、購入ルビー(有料ルビー)と購入ルビー(無料ルビー)がそれぞれ付与される。
次に掲げる各図でいえば、ルビーを70個購入した場合、購入ルビー(有料ルビー)が65個、購入ルビー(無料ルビー)が5個付与される(図2の「ボーナス」が購入ルビー(無料ルビー)をいう。)。
c ユーザーがゲームをプレイすることによって無料ルビーであるゲーム実行ルビーが付与される(図5の「ルビー」がゲーム実行ルビーをいう。)。
d ユーザーの所持アイテムはマイデータに表示され、有料ルビーの総量と無料ルビーの総量がそれぞれ表示される。次に掲げる各図でいえば、有料ルビーを0個、無料ルビーを11個保有していたユーザーがルビーを70個購入すると、有料ルビーを65個(0+65)、無料ルビーを16個(11+5)、それぞれ保有することになる。
(イ) 充足性の判断
上記認定事実によれば、被告ゲームシステムにおいては、ユーザーがルビーを購入することによって購入ルビー(有料ルビー)及び購入ルビー(無料ルビー)が付与され、また、ゲームをプレイすることによって無料ルビーであるゲーム実行ルビーが付与されることが認められる。これらのうち、購入ルビー(有料ルビー)が「第1の仮想アイテム」に、ゲーム実行ルビーが「第2の仮想アイテム」に、それぞれ該当することについては、当事者間に争いがない。
そして、購入ルビー(無料ルビー)は、購入手続を行うことによってユーザーに付与されるものであるから、構成要件1Aの文言どおり、「第1の仮想アイテム」に該当するものといえる。そうすると、被告ゲームシステムにおいて、「第2の仮想アイテム」に該当するものは、ゲーム実行ルビーのみとなる。
他方、上記認定事実によれば、被告ゲームシステムは、購入ルビー(無料ルビー)及びゲーム実行ルビーの総量の和を、無料ルビーとしてユーザーに表示するにとどまり、被告ゲームシステムがその内訳を記憶していることの立証はないことからすると、被告ゲームシステムは、ゲーム実行ルビーの総量を記憶しているものとは認められない。
そうすると、被告ゲームシステムは、「第2の仮想アイテム」であるゲーム実行ルビーの総量を記憶するものではない。
したがって、被告ゲームシステムは、構成要件1Bの「第2の仮想アイテムの数量」を「記憶」するものではなく、構成要件1Bを充足するものとはいえない。
(2) 争点1-3(被告ゲームシステムは「第1の仮想アイテムおよび前記第2の仮想アイテムの両方を保有している場合、第2の仮想アイテムに優先して第1の仮想アイテムを消費させる手段」(構成要件1C)を有するか)
被告ゲームシステムにおいては、「第1の仮想アイテム」である購入ルビー(無料ルビー)及び「第2の仮想アイテム」であるゲーム実行ルビーの数量の和を記憶するにすぎないことは、前記において説示したとおりである。
そうすると、被告ゲームシステムは、「第1の仮想アイテム」と「第2の仮想アイテム」を区分して記憶していない以上、構成要件1Cにいう「第2の仮想アイテムに優先して第1の仮想アイテムを消費させる手段」を有しないものといえる。
したがって、被告ゲームシステムは、構成要件1Cを充足するものとはいえない。
(3) 原告の主張に対する判断
原告は、購入ルビー(無料ルビー)は、「第1の仮想アイテム」と「第2の仮想アイテム」のいずれにも当たらず、付加的構成にすぎない旨主張する。
しかしながら、購入手続によって付与される購入ルビー(無料ルビー)が「第1の仮想アイテム」に該当することは、上記説示のとおりである。そうすると、被告ゲームシステムは、「第1の仮想アイテム」である購入ルビー(無料ルビー)と「第2の仮想アイテム」であるゲーム実行ルビーを区分して把握していない以上、上記にいう優先的消費手段を有しないこととなる。そうすると、被告システムは、「第1の仮想アイテム」を優先的に消費させるという課題を解決するものとはいえず、本件発明1とは技術的思想が異なるものといえる。
したがって、原告の主張は、前記判断を左右するものとはいえず、採用することができない。
その他に、原告が主張する諸点を改めて検討しても、上記の解釈と異なる前提に立つものに帰し、本件発明1の技術的思想を正解するものとはいえず、原告の主張は、いずれも採用することができない。』
[コメント]
本件発明の「第1の仮想アイテム」は、構成要件1Aに規定されるように、購入手続きを行なうことでユーザーに付与されるものである。被告ゲームシステムの「購入ルビー(無料ルビー)」は、「無料ルビー」という名称であるものの、購入手続きを行なうことよってユーザーに「ボーナス」として付与されるものであるから、本件発明の「第1の仮想アイテム」に該当し、被告ゲームシステムの「ゲーム実行ルビー」のみが、本件発明の「第2の仮想アイテム」に該当する、という裁判所の認定は妥当であろう。
また、被告ゲームシステムにおいては、「購入ルビー(無料ルビー)」と「ゲーム実行ルビー」の総量の和を、一括して「無料ルビー」としてユーザーに表示しており、被告ゲームシステムがその内訳を記憶しているわけではないようである。そのため、被告ゲームシステムは、「ゲーム実行ルビー」の総量を記憶しているものとは認められず、被告ゲームシステムは、「第2の仮想アイテム」であるゲーム実行ルビーの総量を記憶するものではないため、被告ゲームシステムは、構成要件1Bの「第2の仮想アイテムの数量(総量)」を「記憶」するものではなく、構成要件1Bを充足するものとはいえない、という裁判所の判断も妥当であろう。
以上
(担当弁理士:吉田 秀幸)
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