IP case studies判例研究

平成23年(ワ)13469号「ペットのトイレ仕付け用サークル」事件

名称:「ペットのトイレ仕付け用サークル」事件
特許権侵害差止等請求事件
大阪地方裁判所:平成 23 年(ワ)13469 号 判決日:平成 25 年 2 月 19 日
判決:請求棄却
特許法70条、特許法101条
キーワード:技術的範囲、間接侵害、進歩性
[概要]
イ号物件は組み立て前の部品セットを販売して購入者が完成させる形態の物件であるが、
裁判所は、イ号物件は本件発明の技術的範囲に属すると判断した上で、本件発明は無効理由
を有し特許権を行使できないと判断した。
[特許請求の範囲](**アンダーラインは争点)
A 複数のパネルが連結されたサークル本体の内部で,収容したペットのトイレの仕付けを行うペ
ット用サークルにおいて,
B 前記サークル本体の内部空間が中仕切体によって仕切られることにより住居スペースとトイ
レスペースに区画されており,
C 前記中仕切体には,ペットが出入り可能な仕切出入口が開口されるとともに,
D この仕切出入口を開閉する仕切扉が設けられ,この仕切扉を介して住居スペースとトイレスペ
ースとの間をペットが行き来できるように或いは行き来が規制されるように構成されていること
を特徴とする。
(無効審判で犬用に限定した訂正をしている。ただし未確定)
[被告の主張]
被告物件は,「収容したペット(犬)のトイレの仕付けを行う」ことが可能な構造ではあるが,
これを必須とするものではなく,また,仕切りパネルによって二つの空間に仕切られるものであ
るが,仕切られた各空間の使用方法はユーザーの任意であり,「住居スペース」と「トイレスペー
ス」に区画されることを必須とするものではない
本件発明の「中仕切体」と「仕切扉」は別部材であるとした上で,被告物件では仕切りパネル
自体が出入口を開閉し,仕切りパネルと扉が一体になっているから(構成d1,d2),構成要件
Dを充足しない
[裁判所の判断]
(1)侵害論
本件発明において,「収容したペットのトイレの仕付けを行う」,「住居スペースとトイレスペー
スに区画」とされているのは,本件発明のペット用サークルの用途に関するものであるところ,
本件発明は,既知の構成に新規の用途を見出したことを特徴とする発明ではなく,ペット用サー
クルの構成自体を特徴とする発明と解されるから,上記各文言は,当該ペット用サークルについ
て,トイレの仕付けのために住居スペースとトイレスペースとに分けて使用することが可能な構
成であることを意味するにすぎず,当該用途に使用されることが必須であるとは解されない。
被告物件1は「トレーニングサークル」という名称で,「幼犬のトイレのしつけに」と宣伝されて
おり,被告物件2も「トイレのトレーニングにも!」と宣伝されている。
被告物件においても,扉は,固定された仕切りパネルの開口部に設けられ,仕切りパネルの横
方向に沿ってスライドさせることができる以上,仕切りパネルと扉が別部材であることは明らか
である。
(2)無効論
本件発明は,乙55文献に記載された発明に基づき,当業者にとって容易想到であること
から,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきと判断する。
(相違点1)
犬の飼育に当たって複数のパネルを連結したサークルを用いることは,本件特許出願時に
周知技術であったと認められる。
(相違点2)
区画されたスペースが「住居スペースとトイレスペース」に使用可能な構成であることを
意味するものであるところ,本件発明のペットサークルにおいて内部空間を仕切った場合,
それが住居スペースとトイレスペースに使用可能な構成であることは,当業者にとって自明
といえる。
区画したスペースを住居スペースとトイレスペースとして使用すること自体について当業
者が容易に想到できるかを検討しても,以下のとおり,当該使用態様は本件特許出願前に開
示されており,当業者は,乙55発明にこれを適用することによって,区画したスペースを
「住居スペースとトイレスペース」に使用することを容易に想到できたといえる。
[コメント]
本件発明の特徴構成は、空間の使用用途ではなく、中仕切体と仕切扉の構成であるから、技
術的範囲に属するとの判断は妥当である。なお、間接侵害に関する明示はないが、直接侵害を前
提に判断したと思われる。一方、本件発明は引例から進歩性はないとの判断は妥当と思われるが、
訴訟とは別に行われた無効審判請求は成立せず、知財高裁で争っている最中である。これがどの
ような結論になるか興味深い。

平成23年(ワ)13469号「ペットのトイレ仕付け用サークル」事件

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