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平成 25 年(ワ)9486 号「センサ付き省エネルギーランプ」事件

名称:「センサ付き省エネルギーランプ」事件
特許権侵害差止等請求事件
大阪地方裁判所:平成 25 年(ワ)9486 号 判決日:平成 26 年 6 月 19 日
判決:請求棄却
特許法100条
キーワード:技術的範囲
[概要]
複数のLEDチップの集合体(LEDパッケージ)がひとつのみ設けられている被告製品
は、本件特許発明の構成要件の「複数のランプ」に相当する構成を有しないとして、原告侵
害差止等請求が棄却された事案。
[本件特許発明]
A 複数のランプ30と,一側に前記ランプ30が固定され,他側にネジ部11が形成され
たソケットボディ10とから構成されたランプにおいて,
B 前記ソケットボディ10に備えられ,周囲の照度を感知する照度センサ12と;
C 前記ランプ30の点灯時間を調節するタイマー13と;
D 前記ランプ30の一側に備えられ,人間の動きを感知する赤外線センサ31と;
E 前記ソケットボディ10に内装され,前記照度センサ12と,タイマー13と,赤外線
センサ31の出力信号に基づき,前記ランプ30の点灯を制御する点灯制御回路40と;
F 前記赤外線センサ31が端部に設けられるセンサ支持台32は,前記複数のランプ30
の間に介在され,前記複数のランプ30の上下方向に沿って延設され,前記複数のランプ
30の高さよりも高くかつ近い位置となるように所定の長さで形成されてなることを特徴
とする
G 自動制御省エネルギーランプ
[裁判所の判断](筆者にて適宜要約)
1 構成要件Aについて
被告製品は,構成要件Aの「複数のランプ30」を備えておらず,構成要件Aを充足する
とは認められない。その理由は,次のとおりである。
(1)構成要件Aの「複数のランプ」の意義
ア 特許請求の範囲の記載
請求項1には,「複数のランプ30」のほかに,「一側に前記ランプ30が固定され,他側
にネジ部11が形成されたソケットボディ10とから構成されたランプ」とあり,2種類の
ランプが記載されている。
前者のランプ30の意義が問題となっているところ,ソケットボディ10に固定されてい
ること,ランプ30が点灯することが記載されているものの,上記ランプの種類を限定する
旨は記載されていない。
イ 本件明細書等の記載
(ア)本件明細書等には,以下の記載がある。
(省略)
(イ)被告は,本件明細書等の記載から,ランプ30は蛍光ランプを前提とすると主張する。
たしかに,前記(ア)のとおり,本件明細書等には,本件特許発明が多機能省エネルギー蛍光ラ
ンプ装置である旨の記載がある(【0001】,【0007】)。この多機能省エネルギー蛍光ラ
ンプ装置とは,複数のランプ30が,照度センサ,タイマー及び赤外線センサと一体に備え
られたものであると記載されているが(【0001】,【0007】,【0010】),複数のラン
プ30については,白熱電球を使用する例が挙げられており(【0017】),必ずしも蛍光ラ
ンプに限定されてはいない。
ウ 拒絶理由通知と補正
原告は,本件特許出願の審査過程において,平成21年10月26日起案にかかる拒絶理
由通知(甲9:請求項1については,引用文献〔特開2002-304912号公報,特開
2003-132704号公報〕に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明するこ
とができたものであるとするもの)を受けた。
原告は,請求項1について,構成要件Fに相当する記載を加える補正をするとともに,平
成22年4月28日,意見書(乙1)を提出した。原告は,上記意見書に,「(上記補正をし
たことにより)自動制御省エネルギーランプ全体がコンパクトに構成されるという本願発明
が奏する効果及び作用がさらに明確なものとなりました」と記載した。
しかし,本件特許発明の奏する効果が多機能省エネルギー蛍光ランプをコンパクトに構成
するものであったとしても,直ちに,ランプ30が蛍光ランプに限定されることにはならな
い。
エ まとめ
前記アからウによれば,構成要件Aのランプ30は,光源を意味するが,それ以上の限定
はなく,蛍光ランプである必要はない(LEDによる光源を含む。)と解される。
(2)被告製品の構成及び構成要件充足性
LEDを使用するランプは,発光素子であるLEDチップの集合体(LEDモジュール)
を光源として用いる。被告製品でも,発光素子(LEDチップ30a:別紙被告製品目録2
【第2図】においてLEDチップ30aとして示される対象は,正方形の板状のものではな
く,そこに配設された発光素子であるLEDチップである。)の集合体を光源として用いてい
る。
そうすると,被告製品では,むしろ,LEDチップ30aの集合体をレンズ30bで覆っ
たLEDパッケージ300aが,構成要件Aのランプ30に相当するというべきであり,少
なくとも,個々のLEDチップ30aをもって,構成要件Aのランプ30ということはでき
ない。
そして,被告製品において,ランプ30に相当する光源であるLEDチップ30aの集合
体(LEDパッケージ300a)は,ひとつしか設けられていない。
したがって,被告製品は,本件特許発明の構成要件Aの「複数のランプ30」に相当する
構成を有するものではなく,本件特許発明の構成要件Aを充足するということはできない。
2 構成要件Fについて
被告製品は,前記1のとおり,ランプをひとつしか備えていない。このため,「センサ支持
台32は,複数のランプ30の間に介在され」るという構成を有しておらず,構成要件Fを
充足するとは認められない。
[コメント]
被告製品は、光源として、複数のLEDチップの集合体であるLEDパッケージをひとつ
のみ用いており、そのLEDパッケージがランプに相当するため、本件特許発明の「複数の
ランプ30」に相当する構成を有しないとの裁判所の判断は妥当であろう。
なお、裁判所は、本件特許発明のランプがLEDによる光源も含むことは認めた。特許請
求の範囲ではランプを蛍光ランプに限定しておらず、明細書にはランプとして白熱電球を用
いる例も挙げられているため、本件特許発明のランプが、必ずしも蛍光ランプに限定されず、
LEDも含むと判断された点は明細書作成の際参考になる。

平成 25 年(ワ)9486 号「センサ付き省エネルギーランプ」事件

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